ある映画を見た次の日の仕事がとてもうまくいった

先日「幸せのちから」という映画を見た。この映画では金銭的にも、夫婦仲的にも幸せとは言えない主人公がある日遭遇したとても幸せそうな男に職とその成功の秘訣を聴くとこから始まる。その幸せそうな男は証券マンであり、彼曰く数学と人に強ければやっていけるというのである。そこで数学の腕には自信のあった主人公はそれを武器に、積極的行動をし、途中彼を襲う多くの不幸(金銭関係や離婚、ホームレスになる等)にも耐え、必死に証券会社の無給かつ厳しい研修に耐え、たった一つの採用枠を勝ち取り、最初に憧れた男のように幸せになることができたという作品であった。

 

 ここからが私の話になるが、この作品を見た翌日私の仕事は異様にはかどった。というのも難しい仕事に直面したときに先に紹介した映画の主人公が努力している姿が脳裏を横切り、あの主人公はあんなに頑張っていたのだから自分もここでへこたれてはいられないなという気持ちが湧いてきたからである。

 確かにこの映像の中の出来事を己の事のように思う感覚は今までにもよく感じたことがある。特に小さいころにはヒーローものなんかを見ると自分も強くありたいと思い変に筋トレを頑張った時もあれば、子供のミュージシャンの出てくる映画を見ると上手に楽器が引きたいと思い必死にドラムを叩いたりしたものである(私は小さいころからドラムをやっている)。

 

 皆さんもこんな経験はないだろうか?しかしこれはよくよく考えるとなかなかにおかしい。特にある程度分別の付く大人になり、あくまでも自分とは異なる映画の中の主人公に己を重ねたからと言ってなぜそこまで何かしらについてのモチベーションが上がるのだろうか。

 

 少々異なる間隔のように思うだろうが、私個人の考えではこの感覚は、テレビでおいしそうに食べられている料理を見てそのご飯が食べたくなるといった感覚、CMの中で楽しそうに遊ばれているゲームやおもちゃを見てそのゲームやおもちゃで遊んでみたいと思う感覚に近いのではないかと思う。この例え話の発生理由はおそらくその料理に対してはそれを食べた人が実際においしそうな反応をするから、そのゲームやおもちゃを遊んだ人が面白いと感じていることが分かるからではないだろうか。もっと要点をまとめるとその料理を食べるとおいしさを感じるという「結果」が、そのおもちゃやゲームを遊ぶと楽しいという「結果」が得られるからなのではないだろうか?

 

 私はこれが、最初に述べた作品の主人公と己を重ねることでモチベーションを上げるという話につながっていると思う。映画に限らず物語は基本的にどこかで主人公は何らかの成功を得ることが多い。もちろん私が先に挙げた映画の主人公は先述の通り幸せを手にする。だからこそ私はその主人公に己を重ねることで、主人公が幸せを手にした様子を見たからこそ、その主人公のように努力すれば幸せという「結果」を得られるのではないかと思えた。だからこそ仕事を頑張れたのではないかと思う

 

 人というのは基本的に自分にとって何かプラスになる結果が得られる確証のある事柄に対してはかなり前向きになれると思う。例えば賭け事なんかが良い例だろう。一度でも買ったという経験があるから、どれだけ負けても次があると信じて次の勝負に出ることができる。

 逆に自分にとってプラスにならないことにはどうしても消極的になる。良い例が勉強にやる気のない子供たちが「数学って何の役に立つの?」と投げかけるといったことであろう。そう、自分にとって役に立たない、良い「結果」をもたらすと確証が持てない物事に対してはやる気をどこか失ってしまう。

 

 確かに物語の主人公に己を重ねてやる気を出すなどということは、物語と現実の分別をつけられない子供っぽいことなのかもしれない。リアリストのような人からすると物語はしょせん物語であり、現実で実践したってそんなにうまくいかないと断じられるかもしれない。

 だがその本質は優れた者から学ぼうとする人間の本能のようなものからくる性質なのではないかと思う。そしてこの物語の中にいるかのような感覚を味わいたいという感情は、アニメ等のコンセプトカフェや、作品の世界観を味わえるようなグッズが売れることを考えると、ある程度の年を取った人からしても共感のしやすいものではないのだろうか?また例え物語の主人公から学んだところで物語の中のようにドラマチックなほどの成功を手にすることができなかったとしても、その日一日の仕事や大変なことを、主人公気分を味わうことの出来る楽しいものとして楽しく取り組むことができ、かつ効率をアップさせることができるというのならそれに越したことはないのではないだろうか。

 

 皆さん。もしなにかモチベーションが上がらないなんてことがあったら、少し小説や映画、音楽などの物語を楽しんでみませんか?案外自分の背中を押してくれる作品が見つかるかもしれませんよ